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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
と、遠い闇から声がした。
振り向き合って、
――はて?
と耳を澄ましていると、二度めの声は、より近く、オオーイとまた聞えた。
「おばばかな?」
「……いや、違う」
「誰だろう」
「男の声だ」
「でも、おれ達を呼んだのじゃあるまいが」
「そうだ。おれ達を呼ぶ者はない筈だ。おばばが、あんな声を出す筈もなし」
秋の水は、刃物のように冷たい。ざぶ、ざぶと、水へ追い立てられるお通の足には、その冷たさがなおさら沁む。
と。うしろから。
タタタと迅い跫音だった。耳にそれが分った時は、もう、追って来た何者かの影は、その三名の直ぐ側をいきなり、
「お通さん! ――」
と、叫びながら、水煙を浴びせて、ざざざッと、向う岸まで一気に駈け渡ってしまったのである。
「――あっ?」
浴びた飛沫に身振いしながら、三名の郷士は、お通を囲んで、浅い河の瀬に立竦んでしまった。
先に駈けて、河を越えた城太郎は、彼らの上がろうとする河原の水際に立ちふさがって、
「待てっ」
と、両手を拡げていた。
「や。何やつだ。汝は」
「何者でもよい。お通さんを、何処へ連れてゆくか」
「さては、お通を取り返しに来たな」
「いかにも」