輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
自分が試合するのではなし――と思ってみても、どうにもならなかった。
きょうの試合は、どっち道、死ぬか生きるかの戦である。今乗せてゆく人を、帰りに乗せて帰れるかどうか――。乗せてもそれは、惨たる死骸であるかも知れないのだ。
佐助には、分らなかった。武蔵のあまりにも淡々とした姿が。
空をゆく一片の白雲。
水をゆく扁舟の上の人。
同じようにすら見えるのであった。
だが、佐助の眼にも、そう怪しまれるほど、武蔵は、この舟が目的地へ赴くあいだ、何も考えることがなかった。
彼はかつて、退屈というものを知らずに生活して来たが、この日の、舟の中では、いささか退屈をおぼえた。
櫂も削ったし、紙縒も縒れたし――そして考える何事も持たない。
ふと。
舷から真っ蒼な海水の流紋に眼を落して見る。深い、底知れず深い。
水は生きている。無窮の生命を持っているかのようである。しかし、一定の形を持たない。一定の形に囚われているうちは、人間は無窮の生命は持ち得ない。――真の生命の有無は、この形体を失ってからの後のことだと思う。
眼前の死も生も、そうした眼には、泡沫に似ていた。――が、そういう超然らしい考えがふと頭をかすめるだけでも、体じゅうの毛穴は、意識なく、そそけ立っていた。