Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
の八時ごろであった。あの町には、あれほど愛し合った栗栖もいるので、立ち去る時、何となし哀愁も残るのだったが、銀子は後を振り返って見ようともしなかった。
足を洗った銀子に、一年半ばかり忘れていた靴の仕事が当てがわれ、彼女は紅や白粉を剥がし、撥をもった手に再び革剥ぎ庖丁が取りあげられた。父はそっちこっちのお店を触れまわり、註文を取る交渉をして歩いた。
「馬鹿は死ななきゃ癒らない。」
銀子はその言葉に思い当たり、なまじい美しい着物なんか着て、男の機嫌を取っているよりも、これがやはり自分の性に合った仕事なのかと、生まれかわった気持で仕事に取りかかり、自堕落に過ごした日の償いをしようと、一心に働いた。彼女の造るのは靴の甲の方で、女の手に及ばない底づけは父の分担であり、この奇妙な父子の職人は、励まし合って仕事にいそしむのだった。
その時になっても、父親の持病は綺麗さっぱりとは行かず、二日仕事場にすわると、三日も休むというふうで、小山で働いていた妹たちも健康を害ねて家で休んでおり、銀子の稼ぎではやっぱり追いつかず、大川の水に、秋風が白く吹きわたるころになると、銀子も一家に乗しかかって来る生活の重圧が、ひしひし感じられ、自分の取った方嚮に、前とかわらぬ困難が立ち塞がっていることを、一層はっきり知らされた。