Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
十三
「こないだ用があって、三里塚へ行ってみたが、今年は寒かったせいか、桜がまだいくらかあったよ。今年は三里塚へお花見に行くなんて、時ちゃんたち言っていたけれど、あの雨だろう。」
「もう菖蒲だわ。」
銀子は家へ来てみて一層侘しくなり、逝く春の淡い悩みに浸された。
「何か話でもあったかい。」
父親は心配そうに訊いた。
「ううん。」
銀子は胸につかえるものを感じ、そういって起ちあがると、そっと二階へあがってみた。
十三
二階は上がり口が三畳で、押入れに置床のある次ぎの六畳に古い箪笥があり、父は敬神家とみえて天照皇大神の幅がかかっていた。東郷大将の石版刷も壁にかかっていたが、工場通いと学校通いと、四人の妹がここで学課の復習もすれば寝床も延べるのだった。
銀子は物干へ出られる窓の硝子窓を半分開けて、廂間から淀んだ空を仰ぎ溜息を吐いたが、夜店もののアネモネーや、桜草の鉢などがおいてある干場の竿に、襁褓がひらひらしているのが目についた。
銀子はまだ赤ん坊の顔も見ず、母の妊娠していたことすら知らずにいたのだったが、なるほどそう言えば正月に受け取った時ちゃんの年始状の端に、また妹が一人殖えました、どうして家には男の子が出来ないんでしょうなどと書いてあったが、余所事のような気持で、嬉しくも悲しくもなかった。