Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
九
」
庸三はぎょっとした。それが庸三も一度逢って知っている秋本のことであった。
「誰れに?」
「私には子供を育てて行くお金がいるんですもの。」
庸三はいきなり恐ろしい剣幕で、葉子の肩を両手で掴んで劇しく揺すり、壁ぎわへ小突きまわすようにした。
「御免なさい、御免なさい。そんなに怒らないでよ。私いけない女?」
やがて庸三は離れた。そして椅子に腰かけた。
そうしている処へ、瑠美子が「まま、まま」と声かけながら段梯子をあがって来た。
「瑠美ちゃん下へ行ってるのよ。」葉子は優しく言って、
「まま今おじちゃんにお話があるの。」
やがて葉子はそのことはけろりと忘れたように、話を転じた。妹が近々許婚の人のところに嫁ぐために、母に送られて台湾へ行くことになったことだの、母の帰るまでゆっくり逗留していてかまわないということだの――。
庸三は灰色の行く手を感じながらも、朗らかに話している葉子の前にいるということだけでも、瞬間心は恰しかった。すがすがしい海風のような感じであった。
九
庸三の今度の訪問は、滞在期間も前の時に比べてはるかに長かったし、双方親しみも加わったわけだが、その反面に双方が倦怠を感じたのも事実で、終いには何か居辛いような気持もしたほど、周囲の雰囲気に暗い雲が低迷していることも看逃せないのであった。