Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
カクテル一杯を呑むのに骨が折れるくらいなのに、性格的な孤独性と時代の距離があるので、いつも戸惑いしたような感じしかなかった。すべてそういった享楽の世界では、彼はいつもピエロの寂しい姿を自身に見出すだけであった。肥ったマダムの家だけは、ほどよく静かに酒を呑んでいる、インテリ階級の少数の人と顔が合うだけだったので、銀ぶらには適当であったが、彼はそうたびたび川沿いの家へ足を運ぶことを、葉子に感づかれて、痛くもない腹を探ぐられるのもいやだったし、そうやって彷徨っていても、心の落着きはどこにも求められなかった。
書斎に帰っていると、門の開く音がして、続いて玄関の硝子戸の開く音がした。庸三は、ちょうど子供を相手に、葉子の噂をしているところだったが、そこへ彼女が割り込んで来て、部屋がにわかに賑やかになった。葉子は今日も病院へ行って、入院中から懇意になった若い医員の二三の人たちと、神田まで食事をしに行って、やがてその連中と別れてから、シネマ・パレスで「闇の光」の映画を見て来たというのだった。見ようによっては何か怪しい興奮と疲労の迹かとも思われないこともないような紅潮が顔に差していたが、芸術の前にはとかく感激しやすい彼女のことなので、それは真実かも知れないのであった。