Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
今までに互いに冷たい感じを抱いたことは一度もなかった。
「それじゃ貴女も別に一軒出して、新規に花々しく旗挙げしたらどうだえ。」
昔しの主人は言うのであったが、内輪に生まれついた小菊にそんな行動の取れるはずもなかった。
小菊は遅くまで一晩話し、懐かしい浪の音を耳にしながら眠ったが、翌日は泳ぎ馴れた海を見に行き、馴染のふかい町の裏通りなど二人で見て歩き、山の観音へもお詣りして、山手の田圃なかの料理屋で、二人で銚子を取り食事をした。
小菊の帰ったのは翌日の朝であった。
「何だってまた己の帰るのを見かけて、房州なんか行ったんだ。」
「すみません。何だか急にあの家が見たくなったもんですから。」
小菊は心の紊れも見せず、素直に答えた。二人は暗礁に乗りあげたような気持でしばらく相対していた。
彼女が自決したのは、それから一月とたたぬうちであった。自決の模様については、噂が区々で、薬品だともいえば、刃物だとも言い、房州通いの蒸汽船から海へ飛びこんだともいわれ、確実なことは不思議に誰にも判らなかった。
均平は銀子が松の家へ住み込むちょうど一年前に起こった、この哀話を断片的に二三の人から聴き、自分で勝手な辻褄を合わせてみたりしたものだったが、土地うちの人は、この事件に誰も深く触れようとはしなかった。