Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
歯科医の兄は東京にも三台とはない器械を備えつけて、町の受けはよかった。ある晩は料亭で、つぶ貝などを食べながら、多勢の美人の踊る音頭を見せられ、ある時はまた川向いにある彼女の叔母の縁づき先であった町長の新築の屋敷に招かれて、広大な酒蔵へ案内されたり、勾欄の下を繞って流れる水に浮いている鯉を眺めながら、彼の舌にも適うような酒を呑んだりした。葉子はそんな家へ来ると、貰われた猫のように温順しくなって、黒の地紋に白の縫紋のある羽織姿で末席にじっと坐っているのだったが、昔から、その作品を読んだり、東京でも、一度逢ったことのある青年が一人いたので、庸三は手持無沙汰ではなかった。葉子と又従兄くらいの関係にあるその青年は、町で本屋をしていたが、傍ら運動具の店をも持っていた。その細君はこの町長の養女であった。勾配の急なその辺の街を流れている水の美しさが、酒造りにふさうのであった。その山地をおりて、例の川に架かった古風な木橋を渡ると、そこはどこの田舎にもあるような場末で、葉子の家もそう遠くなかった。
庸三が寝起きしている離れの前には、愛らしい百日草が咲き盛っていたが、夏らしい日差しの底にどこか薄い陰影があって、少しでも外気と体の温度との均衡が取れなくなると、彼は咳をした。