Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
――とにかくバルコニイに立っている葉子は、何か訳のわからない恐怖に似た胸の戦きをもって、近づく廊下の靴音に耳を澄ましていたに違いなかった。果して青年は近づいて来た。そしてたどたどしい日本語で今下へおりて自動車を呼ぶから、一緒にドライヴしようと申し出た。無論相手がどんな種類の人間だかも解らなかったし、感違いの侮辱も感じたので、葉子は手まねで拒絶したが青年は肯かなかった。そして押問答しているうちに、案内女や通りすがりの観客の足がそこに止まったところで、葉子は先刻ちょっと廊下で偶然に会って立話をした草葉の知合いの、婦人運動などやっているO――女史に頼んで来てもらって、やっと自身の身分を知らせることができた。O――女史は彼女が有名な女流作家であることを、わざと宣言したのであった。
その後葉子は、銀座の曾根のスタジオへ撮影に行った帰りに、飾り窓の前に立っていると、またしてもその青年外人が傍に立って、にやにやしているのに気づいたが、その時は目と目と笑み合っただけで、二三町それとなく迹をつけられた感じだったが、何のこともなかった。そのころの葉子には、まだ娘気の可憐しさや、文学少女らしい矜りもあった。