Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
「さあ梢さん、貴女はこっちがいい。」
小肥りに肥った丸顔の木元主任は、葉子を大きい肱掛け椅子に腰かけさせた。彼は初めて見る葉子の美しさに魅せられた形で、
「いや、世間から何といわれても、貴方は幸福ですよ。」
と庸三にそっと呟いた。庸三は、これもずっと後に葉子が銀座の酒場へ現われたとき、この男も定連の一人で、何か葉子の親切な相談相手になってやっているという噂を耳にしたけれど、何か微笑ましい感じで、いやな気持がしなかった。
葉子も主任の問いに答えて、彼女一流の雰囲気の含まれた言葉で、恋愛も恋愛だが、生活や母性愛の悩みもあって、今までの生活は行き塞まりが来たので、打開の道を求めようとしたのが、何といっても文学が生命なのだし、新しい結婚問題がどうなるにしても、やはり庸三に頼って行くよりほかないのだといった意味を述べていた。彼女は黒い羽織で顔の輪廓がひとしお鮮かで、頬まで垂れた黒髪の下から、滑らかな黒耀石のような目が、長い睫毛の陰に大きく潤い輝いていた。
庸三も「現在の貴方の心境は」なぞと訊かれて当惑した。
「こういうことになると、誰しも未練の残るのは当然でしょう。