Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
庸三は恋愛にかけては、まるで何のトリックも理性もない凡夫にすぎないのであったが、一度ならず二度ならず手許へ引き寄せてみようとする執拗さには、かかる体験の副産物をも計算に入れていないわけではなかった。現実にいつも美しい薄もののベイルをかけて見ている葉子の目には、自身の幻影が、いつも反射的に、自身に対するあらゆる異性の目が、憧憬と讃美に燃えているように見えた。今まで窮屈な家庭に閉じこもって、丸髷姿の旧い型の一人の女性しか知らず、センセイショナルな世間の恋愛事件をも冷やかに看過して来た不幸な一人の老作家を、浮気な悪戯心にせよ打算にせよ、またはいくらかの純情があったにせよ、とにかくその冷たそうにみえる一と皮をしり取って、情熱の火を燃やしたてたということだけでも、葉子は擽ったい得意をひそかに感じていたのであったが、それがかえって逆作用を呈して自身に仇をなす結果となったことは、何としても心外であった。
庸三も証文を取られたことは、ちょっと不愉快であった。証文があるにせよ、無いにせよ書こうと思えぱどんなことでも書ける、書きたくないと思えば書かない――そんなことは自分の意志次第で、証文が反故も同然だという気持が職業心理の憂鬱といった不快な感じを与えた。