Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
長岡とか修善寺などはもちろん、彼の顔の利く管内の遊覧地へ行けば、常子がいうように、三日や五日では帰れなかったが、銀子も相手が相手なので、搾ることばかりも考えていなかった。
岩谷は下町でも遊びつけの女があり、それがあまり面白く行かず、気紛れにこの土地へ御輿を舁ぎ込んだものだったが、銀子がちょっと気障ったらしく思ったのは、いつも折鞄のなかに入れてあるく写真帖であった。
写真帖には肺病で死んだ、美しい夫人の小照が幾枚となく貼りこまれてあり、彼にとっては寸時も傍を離すことのできない愛妻の記念であった。妻は彼の門地にふさわしい家柄の令嬢で、岩谷とは相思のなかであり、死ぬ時彼に抱かれていた。写真帖には処女の姿も幾枚かあったが、結婚の記念撮影を初めとして、いろいろの場合の面影が留めてあった。銀子のある瞬間が世にありし日の懐かしい夫人の感じを憶い起こさせるのて、座敷へ姿を現わした刹那の印象が心に留まった。しかし満点というわけには行かず、妻の生きた面影は地上では再び見る術もなかった。
岩谷の片身難さぬ尺八も、妻の琴に合わせて吹きすさんだ思い出の楽器で、彼はお座敷でも、女たちの三味線に合わせて、時々得意の鶴の巣籠りなどを吹くのだった。