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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

面は女の如く美で、中肉中背の骨格は何らの研磨を物語っていないが、新九郎が自然に備えた黒耀の瞳、柳の臂力、体の屈折など、髪の先から足の爪までほとんど神が一人の剣聖を、この世へ試みに送り出した者かと思えるほど整っている。しかもそれはいまだ何ら俗剣術の型にはまっていないからすべてが自然であって、すべてが怖るべき天才的の閃めきに見えた。

「後世実に怖るべき奴――」と、刹那に河内房が恟ッとしたのはこのためである。しかし、かかる奴はいずれ後には当流の大敵、いまだ技の未熟であるこそ幸い、うんと懲して、あわよくば腕の一本ぐらいは挫き折ってくれんと、窺いすまして新九郎の右小手の隙へ、

「ヤッ」

と一声栴檀刀を打ち込んだ。ひらりと素速く身を竦めた新九郎は、その時、下段の太刀を疾風と捲いて、ブンと勢い鋭く河内房の毛脛を薙ぎつける。猪口才なと跳ね上がった河内房は、再び大上段から新九郎の肩口へビシリと拝み打ちに来たのを、ヤッと払って返す太刀と敵の三の太刀がガッキと火の匂いを発して十字にぶつかる。陰陽一上一下、続け打ちに五、六打合ううち、思いがけない河内房の足がツと新九郎の内股へ入って外輪にぱッと蹴離したので、木剣にばかり気をとられていた彼は、