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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

必死となれば大月玄蕃の鋭い白刃さえかわしたではないか。――と新九郎は、この冒険に向う欣びに顫い立った。

「ではお助け下さいますか。有難うがす、みんなよ、お武家様が行ってやると仰っしゃるだ」

「有難うごぜえます。どうぞ二度と村へ足踏みしねえように懲してやっておくんなさいまし」

「案内致せ」

新九郎は大刀を握りしめて立ち上がった。しかし、さすがに三人を対手に斬合うとなれば、いわゆる、初陣の時の武者ぶるいというような肉のしまる気持を覚えないではなかった。

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この埴生村は、亀岡二万石の領地端れの僻村で、小大名の行政も行届かないところから、それをつけ込んで斑鳩嶽に山荘を構えている雨龍太郎という乱世時代からの郷士が、一族一廓をなして領主もないがしろな横暴を振舞っている。

表面は生野銀山の加奉役と触れているが、実は千坂ごえの旅人を脅かしたり、銀山から京師を荒らしまわる強賊であるという噂が専らであった。

今も、泣き叫ぶ二人の娘を、腕ずくで山荘へ連れ帰ろうと、村端れまで引ッ張って来た三人の凄い浪人体の者は、後ろからワッと鯨波の声が起ったので、振り返ると一人の若い侍を真ッ先に十数名の百姓が得物を持って追いかけてくる様子に、早くも松の木に娘を縛りつけた三人は、来たらば微塵と身構えていた。