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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

意外の客

意外の客

バタバタと武器蔵へ走って来たのは、ほかならぬ娘の君尾であった。

「お父様! お父様!」と嬉しそうに、「あの、お客様でございますの、山で目つけたお客様。江戸のお方でお旗本、そして剣道は柳生流、お若くてりりしくて立派な方。霞ヶ浦へおいでの途次、この里の噂をお聞きになり、見物に参られたそうでございますの。客間においででございます。早く早くお逢いなさりませ。助太刀をなされてくださるそうで、ええええ妾がおたのみしましたのよ」こういうとまるで子供のように、銅兵衛の袖を引っ張った。

驚いたのは銅兵衛で、「これこれ娘、どうしたのだ。袖がもげる。まあ待ってくれ」それからちょっと考えたが、「不思議だな、合点がゆかぬ。こんな場合に見知らぬ武士が、戦の助太刀しようなどと入り込んで来るとは受け取れない。……楠右衛門どん!」と呼びかけた。

「おい」と副頭領の楠右衛門、五十年輩のたくましい顔を、銅兵衛の方へ振り向ける。

「お前さんはどう思うね?」

「さあ」と眉を顰めたが、「奴らの間者じゃアあるまいかな」

「何をいうんだよ、馬鹿楠右衛門!」君尾遠くからぶつ真似をした。「そんな人品とは違うのよ。