轻松读懂日语经典作品
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
「よほど飲んだとみえますね」
と居合せた二、三人の客が同情した顔で云う。
「何しろ、私の店だけでも、一升二、三合は飲りましたからね、たまりませんよ」
「この蒲柳な体で一升からとは驚きましたね、どうです、正体なく寝ているけれど、浪人者には勿体ないような美い男じゃありませんか」
「なあるほど――」
それに気がついた時、誰の眼も、しばらく侍の寝顔の美に衝たれてしまった。
すると、俄かに店の前を行く人足が早くなって、わらわら、同じ方角へ駈け出してゆきながら、
「喧嘩だ、喧嘩だ」
「斬り合いだ、果し合いだ――」
と物々しい触れ散らし、茶店にいた客たちも、その騒ぎに釣出されて、人浪の赴くまま、一散に駈け出して行ってみると、ちょうど、寒松院ヶ原にある枝垂れ桜の下で二重三重の人の垣、事件はそこで起っているものらしい。
「黙れッ、片輪なら何故片輪のように、人出のない所を歩いておらん」
「武士たる者に突き当ったのみか、あまつさえ不敵な口答え」
「それへ直れ、新刀試しに致してくれる」
と、猛り立った連ね文句、いずれも、鐺大地へつく程な長刀を差し、肩肱いからしている七、八人連れは、山手組の武家侠客、深見重左の身内であろうと、周りの見物が囁いていた。