轻松读懂日语经典作品
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けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页
二人の恋は如意輪寺裏の梅月夜から、春が桜を散らすまでになったよりはやく、いつか灼熱して行ったのであった。
二人は熱鬧の中を遁れて、ゆく春の静かな山路を福知山へ向って歩いた。少し離れた後から従いて行く女中のお常は、伊達若衆の新九郎の腰にきらめく太刀の鐺と、金糸銀糸の千浪の帯とが並んで行く後ろ姿を妬ましく見た。
「新九郎様、もうお顔はいつもに変らぬお色になりましたが、ご気分ははれましたか」
「いつか忘れたようでござる。先ほど声をかけられた時は、まるで夢心地でござりましたが……」
「ほんにどうしたことでござりましたろう……」
「よくよく武芸事には性があわぬと見えまする――それはそうと、まだ早うござるゆえ、どこかその辺で少し憩みましょうか」
三人は道の傍らにあった辻堂の縁へ腰を下ろした。お常は日傘を受け取ってつぼめた。――程よくあたりに茂った糸柳は、ちょうど人目を遮るによかった。
瑠璃の空に弧を描いた久摩の峯や、群青の岩絵具を盛り上げた筒井峠、由良の流れは繭糸をくずしたように山裾をめぐっていた――その広やかな視野からあつまって来る風が、この辻堂の縁へ来てさっと遅咲きの牡丹桜を二人の上へ振り舞わせる。