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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
前者の怒りと後者の恥とで、私は頭がほてってくるのを感じ、その複合したやりきれない感じに耐えられなくなって、値段を〇五十とつりあげた。少年たちはいっぱし商売人のようにねばった。六人いるから〇五十では分配がしにくい、もう一かん出してくれ。たった一かんくれえ惜しんでも倉が建つわけではあんめえし、と云った。――それはこの土地の通言で、なにかというとよく使われた。ビールをもう一本飲もうとか、浦粕亭(寄席)へなにわぶしを聞きにゆこうとか、煎餅でも買わないかなどという場合、相手が渋った顔でもみせるとすぐに、その言葉を投げつけるのであった。だが私は閉口しなかった。それで不足ならやめにしよう、と云った。みずからおのれをけがすような、やりきれない自己嫌悪とたたかいながら。少年たちは相談をし、私の決心が変らないことを認めて、ようやくその取引は成立した。
私はその鮒を味噌煮にした。骨まで柔らかにするためには、二日か三日くらい煮なければならない。もちろんガスなどはないので、火鉢に粉炭を入れ、味噌煮の鍋を掛けたりおろしたり、また煮つまると水を加えたりしながら、煮あがるのをたのしみに待つのであった。