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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

或る日また若い巡査がやって来て、あさ子と激しくやりあった。五色揚屋は五色揚を店で売ることだけ許可されている、と若い巡査は云う。おまえのところでは、客に酒食を提供して勘定を取る、それは許可された営業とはべつの営業許可を取らなければ違反行為になる。ねえ、若い旦那、とあさ子が遮る。おまえさんもわけのわからない人だね、このまえおまえさんがそう云ったから、あたしはちゃんと五色揚を売ってますよ、そりゃ買うのは亭主かもしれないが、誰であろうと店台の前へ立って五色揚を呉れと云えば客だよ、亭主だから売らないなんて云えた義理じゃないし、また、そんなことをすればそれこそ営業違反でしょう。待ちなさい、まあ待ちなさい、と若い巡査が遮った。待ちなさいってなにを待つのさ、とあさ子が云った。おまえさん取調べに来たんでしょ、取調べに来たんならこっちの申立てを聞くほうが先じゃないか、喧嘩の仲裁をするんだって喧嘩になったわけを聞かなきゃ仲裁はできない道理でしょ。いやまあ、と若い巡査が云った。これは喧嘩の仲裁ではないし。喧嘩っていうのはものの譬えですよ。まあ譬えはどっちでもいい、この件は取調べと云っても事実の証拠はあがっているんだから。