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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

若い旦那に訊くがね、おまえさん自分のうちで友達を集めて飲んだり食ったりするようなことはないかい、あるだろう、あるのが当りまえさ、そのときだね、失礼だけれど旦那方の給料はそんなにあるもんじゃない、番たび友達を呼んで飲み食いをして、それをいつもおまえさん一人で奢るかい。それはいつもそんなに集まって飲んだり食ったりしやしないよ。いいえさ、仮にするとすればいつも一人で奢るかっていうんだよ、おまえさんどこを見てるのさ、人を取り調べるんならちゃんとこっちを見て饒舌ったらいいじゃないか、そっぽを向いたまんまでどうしようってんだい。いや、そっぽを向いてるわけじゃない、若い巡査はあさ子のほうを見たが、片膝立ちの部分が眼にはいらないように、視線を相手の胸から上へ固定させるためひきつけでも起こしたような眼つきになった。

「それは」と若い巡査は答えた、「そういうときには僕たちは会費を出しあうことにしているよ」

「それが巡査の営業違反になるかい」

「僕はなにも営業なんかしていないよ」

「うちだってそうさ」とあさ子が云った、「うちだって客と云えば云うもんの集まるのはみんなお友達だよ、朝日屋で飲むのがいちばん気がおけなくっていいって集まって来るんだ、うちだって貧乏世帯だから番たび奢ってばかりいられやしない、お友達にしたって番たびごちじゃあ気