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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
また、いま私の住んでいる市では、到るところで木を伐り、丘を崩し、「風致地区」に指定してある海岸を、工場用地として埋め立てている。どこへいっても丘はむざんに切り崩され、皮を剥がれた人間の肌のように、赭土や岩が裸になっている。東京の三十間堀は私にとって第二の故郷のようなものであったが、役人諸君はなんのみれんもなく、僅かな税金を取る目的で埋めてしまった。一人の若い汚職役人が摘み食いをするだけで消えてしまうくらいの税金のために、――ろくさま下水の設備もなく、汚物の溢れている都市。川は悪臭を放つままに任せ堀は片っ端から埋め、丘を削り、木という木は伐り倒し、狭いでこぼこ道に大型バスやトラックが暴走し犇き、空地にはむやみ無計画にアパートを建て並べ、公明選挙といわれるのに何十億とかの金が撒きちらされるという、――よそう、私は本当はそんなことに怒りは感じてはいない、日本人とは昔からこういう民族だったのだ。軍事に関してはべつだったが、その他のすべてが常に殆んど無計画であり、そのときばったりで、木を伐り、山を崩し、堀を埋め、土地を荒廃させながら今日までやって来たのである。