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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

五郎さんはいくらかむっとして、なにがいいのかと反問した。すると住職は、指を折って日を数え、あと二十日ばかりできみのお母さんの喪はあける、二十日ばかり待つだけだから「まあいいじゃないか」と答えた。

「ああそうですか」五郎さんは納得した、「すると喪は七十五日なんですね」

「いろいろあるがね、亡くなった人の魂は七十五日その家の軒先をはなれない、ということがあるから、まず一般の例では七十五日だろうね」

五郎さんは礼を云って家へ帰った。

正確に数えてみると、喪のあけるまで十九日あった。そのくらい待てないわけではない、五郎さんは気をまぎらわせるために、精を出して働いた。ゆい子は家事に慣れないようすで、めしの炊きかたもうまくないし、拭き掃除や洗濯なども、時間ばかりかかってとんと片づかなかった。五郎さんの妹は十二歳になるので、もう男よりもそんなことに眼がつくらしく、父や兄に向って、しきりにあによめの非難をした。

「うちのことができないんならお店へ出ればいいじゃないの」と妹は云った、「どうしてお店へ出さないの、兄ちゃん」

「うるさいぞ、よけえなことを云うな」と五郎さんは叱った、「嫁に来たばかりで、すぐにそうなにもかもうまくやれっか、おまえだってよそへ嫁にゆけば当座はへまなことをするんだ、みんなそうやって慣れてゆくんだ、へっこん