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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

でろあま」

ゆい子は毎晩、夜具のまわりに砂の垣を作った。だんだん口数が少なくなり、顔色も冴えず、いつもひどく疲れはてたように、動作がぐったりと重たげにみえ、また、夜も熟睡ができないようであった。

――自分でも喪が重荷になってきたんだな。

五郎さんはそう推察し、心の中で、カレンダーがあと三枚になったことを慥かめた。そうして、その三枚めも剥がれて、つまり七十六日めの夜になったとき、ゆい子がやはり夜具のまわりに砂垣を作るのを見て、五郎さんは瞞着されたような気持におそわれた。

――もう昨日で喪はあけたよ。

そう云おうと思った。口まで出かかったのであるが、五郎さんはそれをのみこんでしまった。急に「男の意地」といったような、かたくなな気分がこみあげて来、勝手にしやがれ、と肚の中でどなった。そっちがそうするならこっちもこっちだ、知るもんか、と彼は肚の中で続けてどなった。

七十七日めの夜も同じ、次の夜も同じというぐあいで、砂垣は夜ごとに作られ、五郎さんはビールを飲み始めた。「みその」から四軒おいて「四丁目」という洋食屋がある、店先に掛ける暖簾には、ただ御洋食としか書いてないが、土地の者は「四丁目」