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けんなんじょなん

剣難女難

吉川 英治

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年1月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 243,807 字 · 482 页

青空文庫

さッ、四の五を言わずに、潔く勝負をしろ」

「黙れ黙れ、たとえ何と申そうが、其方と勝負はならぬ」

「なに勝負はならぬと?」

「おお、昨日までは天涯無禄の浪人であったが、今宵は既に京極丹後守が家臣じゃ、私の身にして私の体でない大月玄蕃、汝ごときあぶれ者と怨恨沙汰の太刀打ちは断じて相成らぬ。強ってこの玄蕃と勝負を所望いたすなら、お役向きから正当な順序を踏んで参るがいい」

「ええ喧ましいやいッ」

新九郎は叩きつけるような伝法口調になって、

「こっちのお慈悲で、武家作法を踏んでやりゃあつけ上がって、卑怯未練な逃げ口上、春日新九郎と名乗ればこそ、尋常な勝負をしようというものだが、あぶれ者の御曹子と出変れば、順序も糸瓜もあるものか、嫌といおうが拝もうが助けておくことはならねえんだ」

「おのれ場所柄をも弁えずに、その鯉口を切って見よ、家中の詰侍や表役人を呼び立てて、この邸内より遁しはせぬぞ」

「ちぇッ、どこまできたねえ世まい言を並べているんだ、いい加減に往生をしてしまえ」

「待てッ、待て新九郎!」

「ふざけやがるなッ」

「待てッ」

「ええいッ!」

と喉を破った一喝とともに、鞘を躍り出した国俊の烈閃が、抜き合わす間もなく、玄蕃の鼻柱へかけてさっと来た。