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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

けれどもおよその想像はつく。酒、ビール、現物はちゃんとそこにある、ゆうべあらわれたとんでもない女性たちが、芸妓衆であるかどうか非常に疑わしいが、警察署などの監督関係ではそういうことになっているのかもしれない。夥しい数の丼や皿小鉢にどんな料理が盛られ、誰の胃袋へおさまったか覚えはないが、勘定書の品数とそこにある器物とは数があっている、――であろう。それはいちいちあたってみるまでもなく、まるで火事にあった瀬戸物屋の店先のような、その場のありさまを眺めただけで充分だ。とすれば、なんのために巡査を呼ぶか、恥をかいたうえに勘定を払うためにか。

かもは勘定を払った。すると、そのときを待っていたおかっちゃんが出て来て、あたしの分をくれと云った。かもはもういちど青くなった。

――なんて顔をするのさ、とおかっちゃんは攻撃に出た。二度も三度もしとを玩具にしといて只で済ませるつもりかい、しょってるよこのしと、ふざけるんじゃないよ。

かもはおかっちゃんに払った。

「人をばかにして、百円札なんかみせびらかすから悪いのよ」とおせいちゃんは云った、「それでもおかっちゃんには驚いたわ、その客が靴をはいてるまに勝手へいって、お小皿へ波の花を盛って来てさ、朝っぱらからいやなことを云う縁起くその悪いしとだって、うしろから塩花を撒いたわよ」