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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

と長が或るとき鼻柱へ皺をよらせ、さも軽蔑に耐えないというように云った、「青べかってえだよ」

この誇り高い小学三年生は、見る気にもなれないという顔つきでそっぽを向いた。

それは慥かにぶっくれ舟であった。伏せてある平底の板は乾いてはしゃぎ、一とところあいている穴から、去年の枯れ草がひょろひょろと伸びていた。水から揚げられた古い舟ほど、哀れに頼りなげなものはない。それは老衰して役に立たなくなった馬が、飼主にも忘れられ、厩の裏でひとりしょんぼり首を垂れているような感じにみえる。――その日も私は道傍に佇んで、人間も同じようなものだ、などというのは俗すぎるな、というようなことを思いながら、暫くタバコをふかしていた。

そこへ老人が来て話しかけた。私は気づかなかったが、老人は私のようすを見ていたらしい。おそらく、私がその舟にすっかり惚れこんだものと思ったのであろう、にこやかな、とりいるような笑顔をつくり、「この舟を買わねえかね」とあいそのいい声で喚いた。

私は答えることができなかった。

「先生はこの土地のことを詳しく見てえって云ってたんべが」と老人が喚いた、「そんなら岡の上べえ歩きまわってもしょあんめえじゃ、根戸川のまわりだの百万坪の※(「さんずい+入」