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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
少年たちは唾をのみ、水洟を啜り、バケツの側にいた一人は片足の拇指で片足のふくら脛を掻いた。「いやじゃねえけどよ」と一人はバケツへ手を入れて一尾の鮒をつかみあげ、金色に鱗の光るその獲物をさも惜しそうに、また自慢そうに、そして私の購買欲を唆るように、惚れ惚れと眺めながら云った、「こんなえっけえ金鮒はめったに捕れねえからな」
「ンだンだ、みせえま」次の一人も一尾つかまえ、私のほうへ差出しながら云った、「鯉っこくれえあんべえがえ」
さらに一人、さらにまた一人と、六人いる少年たちが全部、暗黙のうちに共同戦線を張って、私を懐柔し、征服しようとした。かれらの眼は狡猾な光を放ち、その表情には闘争的な貪欲さがあらわれた。
私は決して誇張しているのではない、これは浦粕という土地の気風なのだ。いつだったか、――むろんそのときより以前のことであるが、私は蒸気河岸の脇のところで、これと似たような経験をした。もう夕方のことだったろう、河岸の道傍で漁師たちが四五人、蓆や桶を並べて、鯉や雑魚や貝類などを売っていた。それは「日銭」を稼ぐためのものであった。規定としては、漁獲物はすべて組合へ納め、組合で一括してそれぞれの問屋へ卸す仕組になっていたが、ちょっと「日銭」