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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
私はかれらの誘導にしたがって、値段を付け、それらを買い取った。
「いいさ」と私はかれらの去ったあとで自分に云い聞かせた、「味噌煮にしておけば保つからな、当分おかずに困らないで済むわけだ」
私はまえの味噌煮を丼へ移して、それらの鮒を新しく味噌煮にしかけた。
人は信用しないかもしれない。私自身もこれを書きながら、たぶん人は事実だとは信じないのだろうと思うのであるが、少年たちはその儲け仕事があまりにたやすく、かつ確実であることに昂奮と情熱を感じたらしい。二三日するとまたやって来て、さもうれしそうにはしゃぎながら、窓の戸を叩いた。
「並べってばな」と長の云うのが聞えた、「おんだらが先だぞ、押すな」
拒絶されようなどとは寸毫も疑わず、確信そのもののような少年たちの顔を見て、それだけで私は自分の敗北を認めた。――ここまで読まれた方は、もはや小悪魔どもが私を放さないだろう、と想像されるにちがいない。私にしても、仮にふところがもっとあたたかであったら、容易にかれらの手かられがたかったろうと思う。人は黄白の前には、しばしば恥を忍んで屈しなければならないものだ。少年たちが四度めに襲撃をかけて来たとき、ふところの窮乏という現実に助けられて、私はきっぱりと鮒の買取りを拒絶した。