轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

助なあこ(あにいというほどの意味)はお兼に恋をした。助なあこは大蝶丸の水夫であり、お兼は「大蝶」の缶詰工場へ貝を剥きにかよう雇い女で、亭主があった。

この土地で恋といえば、沖の百万坪にある海苔漉き小屋へいって寝ることであった。そんなてまをかける暇がなければ、裏の空地の枯れ芦の中でもいいし、夏なら根戸川の堤でも、妙見堂の境内でも、消防のポンプ小屋でも用は足りた。実際のところ、海苔漉き小屋まで寝にゆくのは、よほど二人がのぼせあがっているか、ゆきすぎた声を抑えることのできない女との場合、――土地の人たちのあいだで、そういう癖のある五人の女性の名が公然と話題になっていたが、――などで、かれらの意見によれば、「そんなにてま暇をかけるほど珍しいことでもあんめえじゃあ」というのが常識であった。

助なあこはそうではなかった。彼は中学生が女学生を恋するように、純粋に、初心に恋していた。大蝶丸で沖へ貝を積みにいっているあいだ、彼の胸はつねにお兼を想うことで痛み、その眼にはお兼の姿、――工場の古びた建物の前で、大勢の女や老婆たちと並んで、巧みに貝を剥いている姿が、絶えずあらわれたり消えたりするのであった。