轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
とペンを持っただけで、蒸気にも乗らず、歩いて町から脱出した。いちどもうしろを見なかった。私にとって、浦粕町はもう過去のものであった。私の眼も心も、前方だけに向っていた。
「東京へ出たら」と私は力んだ気持で呟いた、「おれはやるぞ」
「東京へ出て」と私は不安を抑えきれずに呟いた、「はたしてやってゆけるだろうか、生きてゆく、ということだけでもいいのだが」
次には「なにをくそ」と呟いていた。気負い立ったり、自分の才能のなさや、小説を書いてゆくことの困難さを思って、息苦しいような感じにおそわれたりしながら、私は埃立った陰気な道を歩き続けた。
それから八年ほどのちに、私は浦粕町へいってみた。いま小西六にいる秋山青磁と、戦後に死んだ森谷文吉を同伴して。だが、懐旧の情に唆られて、などという風流な気持ではなく、秋山と森谷が写真をやっていたので、撮影案内をするのが目的であった。――私たちは高橋から東湾汽船に乗ったのであるが、乗ろうとしたとたんに「先生よう」と声をかけられ、見ると、そこに留さんがいるのでどきっとした。
私はそのとき殴られるかと思った。――というのは、それより半年ほどまえに、私は「留さんとその女」