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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
車が走っている時間を利用して、少しばかり「青べか物語」について注を加えたいと思う。第一回の末尾に記したが、この一連の物語の中には、すでに幾篇か小説化して発表したものがあるし、これから小説化する予定のものもあり、その旨を編集部、ならびに読者へ断わっておいたのであるが、――というのは、それらを除いてはこの一篇が不完全なものとなるし、小説として発表したものと、ここに集めたものとは根本的に違っているからである。もう一つ、この物語は戦前にいちど三田文学に載せる筈であった。和木清三郎氏(現「新文明」編集長)が編集していたころで、そのとき私はノートを整理し、「青べか物語」という題名をきめて連載の用意をした。結局は或る人事関係のため、私のほうから辞退したが、そういうことがなかったら、このノートはおそらく散逸してしまったであろうと思うと、おくればせながらここで和木清三郎氏に礼を申上げたいのである。
タクシーは東京を走りぬけ、本所へはいり、錦糸町へと向っていた。こっちへ来たのは戦後はじめてのことで、荒地や沼や田ばかりだったのが、ぜんぜん工場や家でふさがっているのに驚かされた。