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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
から「四つ※(「さんずい+入」、第4水準2-78-20)」まで、荒地に縦横の水路を通じていた。――この水路や沼や池には、鮒、鯉、鮠、鯰などがよく繁殖するため、陸釣りを好む人たちの取って置きの場所のようであった。また、沼や池や芦の茂みの中には、獺とか鼬などが棲んでいて、よく人をおどろかしたり、なにごとでもすぐに信ずるような、昔ふうの住民を「隙さえあれば化かそうと思っている」ということであった。
この町ではときたま、太陽が二つ、東と西の地平線上にあらわれることがある。そういうときはすぐにそっぽを向かなければ危ない。おかしなことがあるものだ、などと云って二つの太陽を見ると「うみどんぼ野郎」になってしまう。そうしてそのときにはすぐ脇のほうで、獺か鼬の笑っている声が聞えるということである。特に鼬はたちの悪いいたずら好きで、人が道を歩いていると、ひょいと向うへとびだして来て、立ちあがって、交通整理でもするように、右手をあげて右をさし示したり、左手で左のほうをさしたりする。そうしたら必ず反対のほうにゆかなければならない。うっかりしてそちらへゆけば、きまって池か堀か、わるくすると根戸川へ落ちこんでしまう、といわれていた。