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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

つづめていえば、長男も次男も家を出、本家の「千本」を長が継いでいるのであって、私の推測によれば、それこそ現在のおっ母あが長太郎とその下の二人の実母である、ということを証明していると思うのであるが、「おっ母あはみんなの継母」であり、「そのためにうちがうまくいっている」という、混りっけなしに割切った長の認識に、私はひそかに感嘆の念を禁ずることができなかった。

それから私たちは堀南へ戻り、鉄なあこの「てんぷら屋」へいった。てんぷら屋といっても仕出し専門であり、店では客は取らないという。鉄なあこも私を覚えていないし、私にも彼は初めて会ったようにしか思えなかった。――私は長に、タクシーをこっちへ廻すように云ってくれ、と頼み、せいぜい四帖半くらいの狭い、ごたごたした部屋へ同伴者といっしょにあがった。

私は鉄なあこにビールを頼み、てんぷらを揚げてくれと云った。そのとき仕出し専門でやっていることがわかったのだ。鉄なあこ――いや、もうそう呼んではいけないだろう、一日に六千個のてんぷらとフライを揚げて捌く、という店の主人なのだから、――一日に油を二た缶も使ってしまう、と鉄さんは語った。