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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

結婚式はかなり派手におこなわれた。披露の宴会は「山口屋」の大広間を使い、招待された客は町長はじめ二十余人、みな旦那衆と呼ばれる人ばかりで、お引き物の折詰には眼の下尺二寸の鯛が入っていたという。招待されなかった消防組長のわに久は、はらだちまぎれに酔っぱらったあげく、火の見櫓へつかまって暴れた。

「あの宴会をぶちこわしてくれるだ」とわに久はどなったそうである、「これからだんだんに登っていって、てっぺんまで登っていってな、すりばんを鳴らしてくれるからな、見ていろ」

「誰も止めるな、おっぽっといてくれ」ともどなったそうである、「いまおれがすりばんを叩き鳴らして、宴会をぶっこわして、町じゅうをひっくらけえしてくれるだから」

誰も止める者はなかった。こういう興味深いみものを途中で止めるような、お節介な人間は浦粕には絶対にいないのである。かれらはわに久を遠巻きにして、げらげら笑ったり、けしかけるようなことを云ったりした。わに久はけんめいに梯子をよじ登ろうとするが、二三段登るとずるずる落ち、また二三段登ると落ちてしまうので、倍増しはらをたてた。

「悪いいたずらだ」と彼はどなった、「いいかげんにふざけろ」