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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

けれどもこの世では、真偽の計量が正しく行われることもある、という稀な例をわれわれは見ることができた。

救いの主は五郎さんの姉であった。父親から手紙を受取った姉が、一人の娘を伴れて北海道からはるばるやって来たのである。娘は小柄な躯ではあるが、健康そうで、縹緻もゆい子より一段とたちまさっていた。実科女学校中退、年もゆい子より二つ若かった。

五郎さんは彼女と結婚した。式も披露宴もまえに劣らず盛大にやった。こんどは消防組長のわに久も招待され、彼は酒宴なかばに酔っぱらって、先般の失態を詫びたという。五郎さんもこんどは用心ぶかく行動した。式の行われた二日後に、友人たちを自宅に招き、新妻の手料理でかれらをもてなしたが、それだけではなく、一週間ほどのちには、その中の三人を「四丁目」へさそってビールを奢り、テキとかチキン・サラダとか奢り、しきりにビールをすすめてから、声をひそめてかれらに囁いた。

「おら初めて見ただよ」と五郎さんは意味ありげな一種の眼くばせを三人にした、「――まるでいま笑んだ柘榴みてえだっただ」

三人はちょっと考えてから、急に奇声をあげて笑いだし、安なあこという一人は、テーブルを力まかせに叩いて奇声をあげた。