轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

或る日の午ごろ、私が食堂のがたがたする椅子に掛け、一本のビールでカツ・ライスを喰べていると、老人が私の卓子へ来て差向いの椅子に掛けた。

いまでもそうであるが、外で食事をするときには、私はなにか読みながらでないとおちつけない癖がある。そのときも私は青巻という本を読んでいて、老人がそこへ腰掛けたものだから、いっそう熱心に読むふりをし、そうして本から少しも眼を放さないままで、トンカツを噛んだりビールを啜ったりしていた。

女が座敷のところへ来て、「芳さんなんにするだえ」と呼びかけた。

「うう」と老人が答えた、「おっかあがいねえからめし食うべえと思って来ただが、うう、なんにすべえか考げえてるだ」

「うちじゃあ考げえるほどごたいそうなものは出来ねえよ」

すると老人が私を見ながら、――そこへ腰掛けたときからずっと、老人が私をみつめ続けていることを私は知っていた、――で、老人は私の顔を見ながら、例のずばぬけた高ごえで喚きたてた。

「ビールをコップに一杯くんねえかね」

「ビールを一杯だって」と女が云った、「おらそんなこと聞いたこともねえ、酎のまちげえじゃねえのかえ」

東京へゆけばビールの一杯売りをやっている、と老人が云った。