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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(七)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 頁
が、どうにもならないのだ。
武蔵野から、伊織を捨て、権之助にわかれ、また、江戸の知己すべてと袂別して、風のように去ったのも、薄々、この前駆的症状を自分でも感じていたので、
――これではならじ。
と、驀しぐらに、その殻を蹴やぶって出たつもりではなかったか。
そして半年以上。気がついてみれば、破った筈の殻は、依然として空虚の自分を包んでいる。あらゆる信念を喪失しかけて空蝉にも似た自分の影が、今宵もふわふわと暗い風の中を歩いている。
お通のこと。
又八のいったことば。
そんなことすら、今の彼には、解決がつかないのだ。考えても、考えても、纒まらないのであった。
矢矧川の水が広く見えて来た。ここへ出ると、夜明けのように仄明るかった。編笠のふちに、川風がびゅっと鳴って行く。
その強い川風のなかに紛れて、何か、ぴゅるウん――と唸って掠めたものがあった。武蔵のからだを、五尺とは去らない空間をつき貫いて行ったのであったが、武蔵の影は、より迅かったと思われるほど、すでにその辺の地上には見えなかった。
ぐわうん、と矢矧川が同時に鳴った。鉄砲の音波に相違なかった。よほど火力のある強薬で遠方から撃ったものだという証拠は、弾うなりと音響のあいだに、息を二つ吸うほどな時間があったのでも分った。