Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
多分一色を訪ねたか、秋本がその時まだ東京にいたものとすると、彼の旅宿へ立ち寄ったものだと思われた。庸三がしとしと雨の降り募って来たアスファルトの上を、彼女が軽い塗下駄の足を運んでいる銀座の街を目に浮かべている間に、彼女のったタキシイがどこをどう辷っていたかも知れないのであった。女と逢っているよりも、女を待っている時の方が、ずっと幸福なものだということは、もとより知る由もなかった。庸三は銀座の到る処に和髪とも洋髪ともつかない葉子独特の髪で、紺の雨傘をさして、春雨のなかを歩いている彼女の幻を追っていた。が、するうち胸が圧されるようになって来た。庸三はしかしそう長く悩んでいなかった。やがて帰って来た葉子は彼の膝へ来て甘えた。
「私を見棄てないでね。」
四月の風の荒いある日、玄関に人があって、出て行った葉子はやがてのこと、ちょっとした結び文を手にして引き返して来た。彼女はそれを読むと、たちまち驚きの色を浮かべた。
「どうしたというんでしょう、あの男が来たのよ。」
それが北海道で破産したという松川であった。
「湯島の宿にいるのよ。すぐ立つんだから、ちょっとでいいから逢ってくれないかと言うんですけれど……。