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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(七) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 371.916 Zeichen · 744 Bildschirme

Aozora Bunko

三

「夏侯惇はいないか」

彼はもってのほか愕いた顔している。馳けつけて来た夏侯惇のすがたを見るや否やこう訊ねた。

「諸将の部下どもは、なんでにわかに引揚げの支度をしておるのか。いったい誰が、軍旅の荷駄をまとめよなどと命令したか」

「主簿の楊修が、わが君の御心を察して、かくは一同、用意にかかりました」

「なに、楊修が。――楊修をこれへ呼べ」

斧の柄を杖に立てて、曹操はけわしい眉をしていた。楊修はやがてその前に平伏して、

「こよいの用心布令は鶏肋との仰せ出しなりと伺い、諸人お心の中を測りかねて難儀しておりましたゆえ、それがしがおことばのご意中を解いて、人々に引揚げの用意あってしかるべしと申しました」

と、憚りなくいった。

自分の胸奥を鏡にかけたように云いあてられて、曹操はひどく惧れた。かつ不機嫌甚だしく、

「鶏肋とは、その意味で申したのではない。慮外者め」

と、一喝したのみか、直ちに夏侯惇をかえりみて、軍律を紊せる者、即座に首を打てと命じた。

暁寒き陣門の柱に、楊修はすでに首となって梟けられていた。昨夜の才人も、今朝は鳥の餌に供えられている。

「ああ、儚い哉」

さすが武骨の将たちも、慄然として、曹操の冷虐な感情におぞ毛をふるい、また楊修の才を悼んだ。