Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(七) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 371.916 Zeichen · 744 Bildschirme
「や、や。洪水だ」
成何もそこを飛び出した。そして馬へ乗って帰ろうとすると、彼方の兵営や陣小屋が、どうと一つの大浪にぶつけられた。見るまに、建物も人馬も紛々と波上へ漂い出し、さらに、次の浪、また次の浪が、それを大空へ揺りあげながら、当る物を打ち砕いて、濁浪の口に呑まんとしてくる。
しかし、その奔濤の中にも、溺れず沈まず、この凄じい洪水の形相をむしろ楽しんでいるかのような影もあった。それは関羽の乗っている兵船や、蜀兵が弓槍を立て並べているたくさんな筏だった。
「筏にすがり、船へ漂いついてくる敵は、降人と見て、助けてつかわせ。激流に溺れてゆく者は、いずれ助からぬ命、無駄矢を射るな」
関羽は兵船の上から悠々下知していた。
この日関平が上流の一川の堰を切ったため、白河と襄江のふたつが一時に岸へ搏ってきたのだった。口川の魏軍は、ほとんど水に侵され、兵馬の大半は押し流され、陣々の営舎は一夜のうち跡形もなくなってしまった。
関羽は夜どおし洪水の中を漕ぎ廻り、多くの敵を水中から助けて降人の群れに加えていたが、やがて朝の光に一方の山鼻を見ると、そこにまだ魏の旗がひるがえって、約五百余の敵が一陣になっている。