Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅくず

現代日本文学館8 徳田秋声

徳田 秋声

Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme

Aozora Bunko

なのに、仮装の登場人物はすでに引込みがつかなかった。間もなく新調の外套を着た葉子がせかせかとプラットホオムへ降りて来た。

「すみません。随分お待ちになったでしょう。」

彼女は電話のかかった時、あいにくトイレットにいたのだと弁解したのだったが、そこへがら空きの電車が入って来たので、急いで飛び乗った。

電車をおりると、駅から自動車で町の高台のあるコッテイジ風のホテルへ着いたが、部屋があるかないかを聞いている庸三が、合図をするまで出て来なかったことも、ちょっと気がかりであったが、洋館の長い廊下を右に折れて少し行くと、そこから石段をおりて、暗い庭の飛石伝いに、ボオイの案内で縁側から日本間へ上がって、やっと落ち着いたのは、二階の八畳であった。寒さを恐れる彼に、ボオイは電気ヒイタアのスウィッチを捻ってくれた。そして風呂で温まってから、大きな紫檀の卓に向かって、一杯だけ取った葡萄酒のコップに唇をつけるころには、葉子の顔も次第に幸福そうに輝いて、鉄道の敷けない前、廻船問屋で栄えていた故郷の家の屋造りや、庸三の故郷を聯想させるような雪のしんしんと降りつもる冬の静かな夜深の浪の音や、世界の果てかとおもう北の荒海に、幻のような灰色の鴎が飛んで、暗鬱な空に日の目を見ない長い冬のあいだの楽しい炬燵の団欒や――ちょっとした部屋の模様