Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
しかし今彼はそう長くは仆れてもいなかった。夏の宵の街でのことで、誰か通りすがりの人の声が耳元でしたかと思うと、たちまち蘇って歩き出した。
大分たってからある日葉子の手紙が届いた。咲子宛のもので、彼女の名も居所も書いてなかった。何か厚ぼったいその封書を手にした瞬間、彼はちょっと暗い気持になったが、とにかく開けて見た。
咲子はちょうど三四日病気していた。時々発作的に来る病気で、何か先天的な心臓の弁膜か何かの故障らしく胸部に痛みを感ずるものらしかった。長いあいだ子供の病気や死には馴れている庸三だったが、夙く母に訣れた咲子の病気となると、一倍心が痛んだ。
「大きくなれば癒りますが、今のところちょっと……。」
医師は言うのであった。
「おばちゃん! おばちゃん。」
そう言って泣く咲子の声が耳に滲みとおると、庸三の魂はひりひり疼いた。彼女は一度言い聞かされると、その瞬間から慈母のことは一切口にしなくなったが、それだけに、葉子の愛情は一層必要となった。童謡や童話で、胸をさすられたり、出ればきっとチョコレイトか何かを買ってくれて、散歩にもつれて行けば、頸を剃ったり、爪を切ったり、細かい面倒を見てくれる若い葉子の軟らかい手触りは、ただそれだけですっかり彼女を幸福にしたものだったが、それが瑠美子の母として彼女をおいて出て行った