Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
費用がほとんど倍加して来たことも仕方がなかった。住居が広くなっただけでも彼は満足するよりほかなかった。そこには古い彼の六畳の書斎だけが、根太や天井を修繕され、壁を塗りかえられて残されてあった。三十年のあいだ薄い頭脳と乏しい才能を絞って、その時々の創作に苦労して来たのもその一室であったが、いろいろな人が訪ねて来て、びっくりしたような顔で、貧弱な部屋を見廻わしたのも、その一室であった。そこはまた夫婦の寝室でもあり、病弱な子供たちの病室でもあった。わずか半日半夜のうちに、十二の夏疫痢で死んで行った娘の畳の上まで引いた豊かな髪を、味気ない気持で妻がいとおしげに梳ずってやっていたのも、その一室であった。お迎いお迎えという触れ声が外にしていて、七月十七日の朝の爽やかな風が、一夜のうちに姿をかえた少女の透き徹るような白い額を撫でていた。そして気が狂わんばかりに、その時すっかり生きる楽しさを失ってしまった妻も、十数年の後の、ついこの正月の二日の午後には、同じ場所で、子供たちの母を呼ぶ声を後に遺して冷たい空骸となって横たわっていたのであった。この部屋での、そうした劃期的の悲しみは悲しみとしても、彼は何か小さい自身の人生の大部の痕迹が、その質素な一室の煙草の脂に燻しつくされた天井や柱、所々骨の折れた障子、木膚の黝ずんだ縁や