Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Lesen Sie 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 327.364 Zeichen · 638 Bildschirme
しかし秋本の問題に、未練らしくいつまでもこだわっている葉子でもなかった。彼をそうした絶望に逐いやったことも可哀そうに思えたし、好い金の蔓を見失ったことも残念だったので、なおいくらかの自信と希望を失わないながらに、何か落し物でもしたような心寂しさを感じていた。
するうちに春が訪ずれて来た。大きな石が積み重ねられ、植木が片寄せられたままになっている庸三の狭い庭にも、餌を猟りに来て、枝から枝を潜っている鶯の軽捷な姿が見られ、肌にとげとげしい余寒の風が吹いていた。庸三の好きな菜の花が机の上の一輪挿しに挿されるころになると、葉子の蒼かった顔にもいくらか生気が出て来て、睫毛の陰に潤んでいた目にも張りが出て来た。名伏しがたい仄かな魅力を潜めている、頬から顎のあたりにも、脹らみが取り戻されて来た。どうにか用心ぶかく冬を凌いで来た庸三も、毎年このころになると、弱い気管の方にこびり着きやすい感冒にかかって床に就くのが例になっていたが、どうした訳かその年はそんなこともなく、世間の非難や文学的な悩みはありながら、とにかく彼女に紛れてうかうかと日を送っていた。
葉子は二日おきぐらいに、病院へ行くと言っては出て行ったが、時には関係の婦人雑誌の編輯室をも訪れた。