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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

二

「逃がすなよ」

呂布は、一礼して、そこを離れたと見ると、無気味な眼を光らして、百官のあいだを、のそのそと歩いて来た。

二

「おい。ちょっと起て」

呂布の腕が伸びた。

酒宴の上席のほうにいた司空張温の髻を、いきなりひッ掴んだのである。

「あッ、な、なにを」

張温の席が鳴った。

満座、色醒めて、どうなることかと見ているまに、

「やかましい」

呂布は、その怪力で、鳩でも掴むように、無造作に、彼の身を堂の外へ持って行ってしまった。

しばらくすると、一人の料理人が、大きな盤に、異様な料理を捧げて来て、真ん中の卓においた。

見ると、盤に盛ってある物は、たった今、呂布に掴み出されて行った張温の首だったので、朝廷の諸臣は、みなふるえあがってしまった。

董卓は、笑いながら、

「呂布は、いかがした」と呼んだ。

呂布は、悠々、後から姿をあらわして、彼の側に侍立した。

「御用は」

「いや、そちの料理が、少し新鮮すぎたので、諸卿みな杯を休めてしまった。安心して飲めとお前からいってやれ」

呂布は満座の蒼白い顔に向って、傲然と、演説した。

「諸公。もう今日の余興はすみました。杯をお挙げなさい。