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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

四

「はい。有難うございますが」と、劉備はあくまで、素直をよそおって、

「私には、故郷に一人の母がいますので、せっかくですが、お仲間には入れません」

「おふくろなぞは、あってもいいじゃねえか。喰い扶持さえ送ってやれば」

「けれど、こうして、私が旅に出ている間も、痩せるほど子の心配ばかりしている、至って子煩悩な母ですから」

「そりゃそうだろう。貧乏ばかりさせておくからだ。黄巾党に入って、腹さえふくらせておけば、なに、嬰児じゃあるめえし、子の心配などしているものか」

四

馬元義は、功名に燃えやすい青年の心をそそるように、それから黄巾党の勢力やら、世の中の将来やらを、談義しはじめた。

「狭い目で見ている奴は、俺たちが良民いじめばかりしていると思っているが、俺たちの総大将張角様を、神の如く崇めている地方だってかなりある――」

と、前提して、まず、黄巾党の起りから説きだすのだった。

今から十年ほど前。

鉅鹿郡(河北省)の人で、張角という無名の士があった。

張角はしかし稀世の秀才と、郷土でいわれていた。その張角が、あるとき、山中へ薬をとりに入って、道で異相の道士に出会った。