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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

白馬将軍

一

袁紹も、兵馬をまとめて一時、河内郡(河南省・懐慶)へ移ったが、大兵を擁していることとて、立ちどころに、兵糧に窮してしまった。

「兵の給食も、極力、節約を計っていますが、このぶんでゆくと、今に乱暴を始め出して、民家へ掠奪に奔るかもしれません。さすれば将軍の兵馬は、たちまち土匪と変じます。昨日の義軍の総帥もまた、土匪の頭目と人民から見られてしまうでしょう」

兵糧方の部将は、それを憂いて幾たびも、袁紹へ、対策を促した。

袁紹も、今は、見栄を張っていられなくなったので、

「では、冀州(河北省・中南部)の太守韓馥に、事情を告げて、兵糧の資を借りにやろう」

と、書状を書きかけた。

すると、逢紀という侍大将のひとりが、そっと、進言した。

「大鵬は天地に縦横すべしです。なんで区々たる窮策を告げて、人の資などおたのみになるのでござるか」

「逢紀か。いや、ほかに策があれば、なにも韓馥などに借米はしたくないが、なにか汝に名案があるのか」

「ありますとも。冀州は富饒の地で、粮米といわず金銀五穀の豊富な地です。よろしく、この国土を奪取して、将来の地盤となさるべきではありますまいか」