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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

四

七宝の篏飾、なんと見事ではありませんか」

と、呂布のほうへ、鞘をも渡した。

呂布は無言のまま、刃を鞘におさめて手に預かった。そして、

「馬を見給え」と促すと、曹操は、

「はっ、有難く拝領いたします」

と、急いで庭上へ出て、呂布がひいて来た駿馬の鬣をなでながら、

「あ。これは逸物らしい。願わくば相国の御前で、ひと当て試し乗りに乗ってみたいものですな」

という言葉に、董卓もつい、図に乗せられて、

「よかろう。試してみい」

とゆるすと、曹操はハッとばかり鞍へ飛び移り、にわかにひと鞭あてるや否や、丞相府の門外へ馳けだして、それなり帰ってこなかった。

四

「まだ戻らんか」

董卓は、不審を起して、

「試し乗りだといいながら、いったい何処まで馳けて行ったのだ――曹操のやつは」

と、何度も呟いた。

呂布は初めて、口を開いた。

「丞相、彼はおそらく、もう此処に帰りますまい」

「どうして?」

「最前、あなたへ名刀を献じた時の挙動からして、どうも腑に落ちない点があります」

「ム。あの時の彼奴の素振りは、わしも少し変だと思ったが」

「お馬を賜わり、これ幸いと、風を喰らって逃げ去ったのかも知れませんぞ」