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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

四

湖南の水、湖北の岸、揚子江の流域はようやく波さわがしい兆しをあらわした。

さて、ここに。

孫堅方では、その出陣にあたって、閨門の女性やその子達をめぐって、家庭的な一波紋が起っていた。

彼の正室である呉氏の腹には、四人の子があった。

長男の孫策、字は伯符。

第二子孫権、字は仲謀。

第三男、孫翊。

第四男、孫匡。

などの男ばかりだった。

また、呉氏の妹にあたる孫堅の寵姫からは、孫朗という男子と、仁という女子との二人が生れていた。

また、兪氏という寵妾にも、ひとりの子があった。孫韶、字は公礼である。

――明日は出陣。

と聞えた前夜のこと。その大勢の子らをひきいて、孫堅の弟孫静は、なにか改まって、兄孫堅の閣へたずねて来た。

四

「舎弟か、――やあ大勢で揃って来たな。明日は出陣だ。みんなして門出を祝いに来たか」

孫堅は、上機嫌だった。

弟の孫静は、

「いや兄上」と改まって、

「あなたのお子たちをつれて、こう皆して参ったわけは、ご出戦をお諫めにきたので、お祝いをのべに来たのではありません」

「なに。諫めに?」

「はい。もし大事なお身に、間違いでもあったら、この大勢の公達や姫たちは、どうなされますか。