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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页
春園走獣
一
をはき、剣を佩いて、その肥大した体躯をそらしてわが物顔に殿上に横行していた。
同時に。
年号も初平元年と改められた。
春園走獣
一
まだ若い廃帝は、明け暮れ泣いてばかりいる母の何太后と共に、永安宮の幽居に深く閉じこめられたまま、春をむなしく、月にも花にも、ただ悲しみを誘わるるばかりだった。
董卓は、そこの衛兵に、
「監視を怠るな」と厳命しておいた。
見張りの衛兵は、春の日永を、あくびしていたが、ふと幽楼の上から、哀しげな詩の声が聞えてきたので、聞くともなく耳を澄ましていると、
春は来ぬ
けむる嫩草に
々たり
双燕は飛ぶ
ながむれば都の水
遠く一すじ青し
碧雲深きところ
これみなわが旧宮殿
堤上、義人はなきや
忠と義とによって
誰か、晴らさん
わが心中の怨みを――
衛兵は、聞くと、その詩を覚え書にかいて、
「相国。廃帝の弘農王が、こんな詩を作って歌っていました」
と、密告した。董卓は、それを見ると、
「李儒はいないか」
と呼び立てた。そして、その詩を李儒に示して、
「これを見ろ、幽宮におりながら、こんな悲歌を作っている。生かしておいては必ずや後の害になろう。何太后も廃帝も、おまえの処分にまかせる。